連載 その⑧

和製英語は便利?

 冬季オリンピックが終わった。熱心にテレビで観戦していた人はソチオリンピックが終わって喪失感を味わっているとか。それを“ソチロス”というと今日のテレビで司会者が言っていた。去年の朝の連続ドラマ『あまちゃん』が終わった後、熱心なファンはしばらくあまちゃんが恋しくて“アマロス”にかかったのと似たような現象だという。ロスはloss、失うこと、喪失による悲しみ。言い得て妙というか、なんとも面白い日本語である。そう、これはもちろん、英語の意味を日本語的に繋げた和製英語で、和製英語は日本語の一つの形である、とわたしは思う。英語で話すときにそのまま使っても通じない。説明が必要である。

 中には英語にあるのではないかと思ってしまう言葉もある。たとえばハートフル(heartfull)。心のこもったとか、心からのというような言葉として日本語の広告などに使われている。でも、辞書にはハートフルという英語はない。いちばん近いのがハーティー(hearty)だろうか。ハートレス(heartless)冷淡な、冷酷なという言葉があるのにハートフルはない。これはうっかり使ってしまいそうな和製英語である。

 もう一つ、いかにもありそうな英語、でも、実際にはない、という言葉に“ホームパーティー”がある。家にお客さんを呼んでパーティーを開くことという意味合いで使われているが、これは比較的新しい和製英語。実際には、英語なら「ディナーに招く(招かれる)とか「ランチに招く(招かれる)」という表現をする。それほどフォーマルでなかったら、Let’s get together(集まりましょう)で充分。何々のためにと、たとえばだれかの誕生日とか、新しい友だちの紹介とかいう理由をつけて招待する。

 “ホームパーティー”のほうがあまり形式張らない感じがする? そういうあいまいさを表すために和製英語が誕生したのでしょう。これはこれでいいのかも。日本語に巾を作るもの、と思うことができる。でも、英語を話すときには、和製英語かもしれないと一応疑うほうがいい言葉があることにご注意。 

(2014/02/25)