2024年7月

7月31日(水)
東西線。優先席の向かいの若い男性は時々隣の女性の肩に頭を乗せて寝ている。西葛西に着き、また私は立ち上がるのにもたついていたらしい。ふと手を差し出された。眠り男子だった。力強い柔らかな手。ありがとう。


7月30日(火)
日本橋の三越本店に半年ぶりに行き、待ち合わせを正面入り口でしたお陰で、ライオン横に紺に白抜きで「丸に越」ののれんがかかっていることに気付く。室町で数日遅れ誕生日ディナーを美礼と共にして夕まぐれに帰る。


7月29日(月)
翻訳塾で、「drone」という無人空中撮影機が作られた、と英文記事から訳したのは、ほんの数年前。元の言葉通り「雄蜂」と日本語にしたのもあった。今や空爆に、他国のスポーツの練習風景を盗み撮りすることに活躍・・・


7月28日(日)
高校や大学の厚い名簿が何年かぶりに新しくなり、前のを処分しなくてはならない。小さなシュレッダーを地域の世話をしてくれる人に上げてしまい、取っておけばよかったと今頃思いながら、少しずつ手で裂いている。


7月27日(土)
偶然見た好きな情景。米野球ヤンキースの試合中、5、6歳の女の子がベンチに跨って黙々とペットボトルフリップに挑戦するのを周り中が息を呑んで見ている。ついに成功!大人達はワーッと声を上げて立ち上がり大喜び。


7月26日(金)
いつの間にかお酒を飲まなくなった。数年前までワインは家でもよく飲んでいたのに、忘れてしまった。でもいま飲みたいのはザ・グレンリベット。森山未來と角野隼人がハイボールで飲んでいたのが素敵だったから。


7時25日(木)
パリ五輪が始まるのに、楽しみだね、なんて言葉は周辺で聞かれない。世界のあちこちで多勢が飢えたりドローンに怯えたりしているのだから、そうよね。力を発揮しようと備えているアスリート達は、しっかりね。


7月24日(水)
昨日は芥川の『河童』を岩波文庫で読み直した。本の最後に姉の端正な字で小さく佐喜子とあり、昭和25年で思い出す。もう中学生になったのだからと言って、くれた本だった。漢字は全部ふりがな付きだから読めたはず。


7月23日(火)
熱中症アラートが頻繁に届く、東京で34度というおそろしいような暑さ。家にこもって冷房を効かせていると冷えすぎ、ガラス戸を1枚開けておくと、外の風も感じられてちょうどいい。贅沢なことをしていると思いつつ。


7月22日(月)
この4月30日にポール・オースターが77歳で亡くなり、その自宅での死去を友人達に知らせる前にメディアが報じた状況に、夫人で作家のシリ・ハストヴェットが「私たち家族の dignity が奪われた」といま訴えている。


7月21日(日)
昨年は1年の四分の一が真夏日か猛暑日で、今年はそれを上回るとか。朝9時過ぎ、もう空気がモワッと重い中をマルエツまで買い物に行き、ほぼ1週間分の食料でカートが一杯になるのをカウンターに預け、後で届けてもらう。


7月20日(土)
これは100年も前の作品です、と気軽に口にしていて、最近、はたと意識する。それから15年後に私は生まれている。さらにその15年後には本なら読み、歌なら口ずさんでいたかもしれない。100年前は、ついこの間のこと。


7月19日(金)
これまでに積み重なる読書では、やはり小説が一番好き。村上龍の『Kyoko』は辛いエイズに向き合い、忘れられない清らかさ、温かさを胸に刻んでくれた。映画もよかった。コロナの蔓延から生まれた作品はあるのか。


7月18日(木)
もうすぐパリ五輪が始まる。ちょうど100年、水質浄化がされないままだったセーヌ川も泳げるようになったという。一方、アタル内閣を総辞職に追い込んだマクロン大統領が「嫌われ者」になっている。国の平和は難しい。


7月17日(水)
朝。蒸し野菜ーーブロッコリーは胡麻D、インゲンマメはマヨネーズ、シメジは青紫蘇ノンオイルD。ミニトマトにカッテージチーズ。カリッと焼いたパンにはバター。コーヒー。身体に良くなくていい。好きなものを食べる。


7月16日(火)
勝どきの部屋に用事があって雨の中を往復する。ベビーカーに赤ちゃんを乗せてバスで立っている親も大変そう。お母さんの場合が多いが、今日、横にいたのは若いお父さんでよかった。大きな荷物も抱えて、頼もしい。


7月15日(月・休)
古い『朝日人』を懐かしく辿る。いつも最後のページで、近々亡くなられた方への同僚や後輩からの惜別の言葉が寄せられていた。今はサイトで名前が告げられるだけになりつつある。人のつながりが希薄になったのか。


7月14日(日)
唐澤さんと電話で話す。いつも何かに感動し何かに呆れている。その感情の起伏の激しさで、私にまで生きていることを思い出させ、血のめぐりを刺激してくれる。近くモンテーニュの何かを送ってくれるそうで楽しみ。


7月13日(土)
外は夏日の暑さと梅雨の鬱陶しさが重なり美術展も混んでいるらしく、外出をたじろがせる。beアンケートで「最期は自宅で迎えたいですか」と聞かれ答えは「いいえ」。夢にも思わない、ある一瞬にパッと消えたいな。


7月12日(金)
レッド・グルームスの作品を見たい。書棚にあって展覧会を思い出せない図録は美礼が買ったものだから? 大衆性、純粋、喜劇等の言葉が連なる解説がぴったりの作品群。1937年生。ミミ・グロスと結婚していた作家。


7月11日(木)
帰りの都営新宿線は何年振りかでゴージャス車両だった。柔らかいクッションの個々に区切られた席は肘掛け付きで幅広く、ゆっくりと座れる。床は木で(多分)滑らか。いつもこうだと嬉しく、この豊かさは心地よい。


7月10日(水)
コンビニでコピーをとったお釣りに超汚れた10円玉が混ざり、使いかけのレモンを輪切りにして挟んでみた。数回繰り返して黒ずみは取れたけれど変なピンク色になった。試しに販売機で切符を買ってみたらOKだった。


7月9日(火)
熱中症アラートが頻繁に出される日々。でも外に出ると意外とそよ風が吹いていたり、さっと曇って小雨がぱらついたりする。冷たい飲み物と扇子があればバスを待つあいだは凌げる。冷房の効いた乗り物がありがたい。


7月8日(月)
小池百合子都知事が再選。得票数5位だった安野貴博さんに副知事になってもらったらどうだろう。生成AIを駆使して民意を的確に集めるという「デジタル民主主義構想」を現場で活かしてみてほしい。供託金も没収されるし。


7月7日(日)
朝7時に投票所が開いてすぐ、都知事選投票を済ませる。キラッと光る人は誰もいず、致し方なく一人の名前を書く。いま興味がある人といえば、ヴァン・トアン・ラム、オリヴィエ・ラトリー、レオナルド・ディカプリオ・・・


7月6日(土)
虎ノ門のビーテックで1時間、ホランダーと林光の曲をHISASHIのヴォーカルと廻由美子のピアノで聴く。外に出ると雨が辺りを閉ざし雷鳴が響いていた。佐藤信の詩「雨に濡れた木馬」がよかったなあと思いながら帰る。


7月5日(金)
新しい白のビルケンシュトックが届いた。こればかり履いて多分20年になる。右肘の複雑骨折で救急車で運ばれて脱いだ時に、若い看護師さんが、あ、ビルケン、と言ったから。今度も美礼が注文して取り寄せてくれた。


7月4日(木)
やっと練馬区立美術館へ。待望の『三島喜美代ー未来への記憶』をみる。この6月19日に91歳で亡くなられたが、大展示で語りかけながらのご逝去は幸せだったかも知れない。10600個の「20世紀の記憶」は圧巻、眼に刻む。


7月3日(水)
メトロの優先席で譲られた三人掛けの真ん中。バーもないので掴まる所がなく、座席の背に手を当てて座る。降りる時にもモタモタしていると前にいた若い女性がさっと手を出してくれた。助かりました、とお礼を言う。


7月2日(火)
昨日「えどがわメールニュース」で送られた、71歳の認知症の男性が行方不明という協力依頼に対して、さっき「無事見つかりました」とのこと。写真まで添えての依頼で心配が強く伝わっていた。見つかってよかった!


7月1日(月)
「なぜ私が、九十歳という、自分自身でもびっくりするような年齢に達してから、『くまのプーさん』の作者、A・A・ミルンの自伝を訳そうと思い立ったのか、その理由は、私にもはっきり説明することができません。』(石井桃子『今からでは遅すぎる』訳者あとがき冒頭から)